小説に興味を持ってから人生が楽しくなった

読書が苦手だった私が、五十歳を過ぎてから、急に読書が好きになった。そのおかげで人生が豊かになった気がする。これからもっと読書が好きになれるように、人生が楽しく豊かになるように

小説を読もう「降霊会の夜 浅田次郎」の言葉表現

「降霊会の夜 浅田次郎」の表現をまとめただけの資料です。

 しばしば同じ夢を見る。
 たそがれどきであろうか、あたりは橙色のうら悲しい光にくるまれており、私は見知らぬ女に導かれてひたすら歩んでいる。
 どこへ行くのだ、と訊ねても答えはない。しかし行方がどこであろうが私のうちに不安はなく、むしろ女のなすがままに身を委ねるここちよさを感じている。女に悪意がないということだけはわかっているのである。

「あのさあ、毎度同じことを言うのも何だけど、子供の遣いはよしとくれって、おとっちゃんに言っといて」
 声が終わるより先に窓が閉められた。

 痛ましいほど痩せた背中に浮き出る肩甲骨を見つめながら、もしやこいつは昔の世界から、時空を超えて転校してきたのではないかと思った。

 その罪はいずれ私の中で発酵して何かとんでもない罰が下されるような気がした。

橋を渡り切ると、百合子はやはり振り向きもせず、愛想も何もない三階建ての寮の玄関に、すっと吸いこまれるように消えてしまった。

「ちょっと、ゆうちゃん」
真澄が顎を振って、私をテラスの闇に誘った。

卓也は少し考えるふうをしてから、「その通りだな」と、今さら気付いたように呟いた。

窓の外の霧が鼠色に濁り始めた。見え隠れしていた唐松も、やがて薄闇に溶け入ってしまった。

濡れたベンチをハンカチで拭って腰を下ろし、ミニスカートの膝を寒々しくすぼめて、突然申し渡された別れの宣告について考え続けたにちがいない。

梓がうなだれたまま、せわしなく白い息をついた。

私の落胆にちらりと目を向けてから、ミセス・ジョーンズは慰めるように、「よくあることですよ」と言って微笑んだ。

ヘッドライトとテールランプが交錯する六本木の十字路。

小石を踏む音が空隙(くうげき)に吸い込まれるほどの静けさだった。

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