小説に興味を持ってから人生が楽しくなった

読書が苦手だった私が、五十歳を過ぎてから、急に読書が好きになった。そのおかげで人生が豊かになった気がする。これからもっと読書が好きになれるように、人生が楽しく豊かになるように

小説を読もう「ちょっと今から仕事やめてくる 北川恵海」の言葉表現

ちょっと今から仕事やめてくる 北川恵海

ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうとしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中だとわかる。なぜ赤の他人をここまで? 気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだったー。
スカッとできて最後は泣ける。

書き出し

六時に起床。同、四十六分発の電車に乗る。八時三十五分、会社に到着。席に座ると同時にパソコンの電源を入れる。
十二時から一時間の昼休憩。席を立ち上がったところで上司に声をかけられ、解放されたのは十二時十五分。歩いて安いラーメン屋には長蛇の列。並ぶこと十五分。ようやく飯にありつける。注文が来るまで三分。湯気の立ち上がるラーメンを胃袋に吸い込むこと五分。すぐに席を立ち、会社の玄関横にある小さな喫煙スペースで、缶コーヒーを片手に立ったままタバコを吸かす。この半年でタバコの量は二倍に増えた。ここでやっと、ホッと一息をつく。時刻はすでに十二時四十五分を経過している。

鼻先をかすめるように、特急電車がスピードを緩めず走り過ぎる。数日前まで蒸し暑かったはずの風は、いつのまにか少し冷気を含んでいた。

目を閉じていると突然、右腕に衝撃が走った。
驚いて振り向くと、俺のあまり引き締まっていない腕の肉に"誰か"の指がガッチリ食い込んでいる。さほどゴツくはないが、明らかに男の指だ。
その指先から腕へと、少しずつ視線を這わせていく。
肩まで辿ったその先には、全く見覚えのない、俺と同い年くらいに見える男が、満面の笑みで俺の真後ろに立っていた。

「悪い、待たせて」
席に戻ると、ヤマモトに預けていたカバンを受け取り、小さな座布団になんとか尻を収めた。

「泡、消えてもうたで」
ヤマモトは俺のジョッキを指さすと、いかにも残念、というように眉を下げ、下唇を尖らせて見せた。
「ああ、いいよ。トイレ混んでてさ」