小説に興味を持ってから人生が楽しくなった

読書が苦手だった私が、五十歳を過ぎてから、急に読書が好きになった。そのおかげで人生が豊かになった気がする。これからもっと読書が好きになれるように、人生が楽しく豊かになるように

小杉健治小説を読もう「黙秘 裁判員裁判」

面白い小説
黙秘 裁判員裁判 小杉健治

 内堀優一郎は、五年前に娘の優希をストーカーに殺害された。
 その犯人は中下要。中下は優希にストーカー行為を繰り返していた。優希をナイフで脅し、無理矢理、車に連れ込んだ。優希が車から逃げたので、カッとなり車で追いかけてひき殺された。
 しかし、中下は殺人罪では無罪になり、自動車運転過失致死傷罪が適用されただけで懲役三年の刑だった。ストーカー被害を訴えていた優希に対して警察の対応の怠慢を隠すため、検察も裁判でストーカー行為については問題にしなかったためだ。

 中下要は出所して二年後に殺害された。
 優希への復讐が動機として、内堀優一郎が殺人容疑で逮捕され、裁判員裁判がはじまった。
 しかし、動機は、単に中下に対しての復讐だけではないかもしれない。中下要を微罪にした裁判所、控訴しなかった地検、そして保身を優先した警察などに対する復讐ではなかったかとも考えられた。
 犯行を否認しながら、黙秘続ける内堀優一郎の真意は何か? 裁判の行方は? 
 小杉健治さんの作品の裁判シーンは臨場感があって引き込まれてます。



書き出し
 手錠に腰縄という姿で、内堀優一郎は扉の前に立った。逮捕から約三ヶ月。いよいよ、自分に対する裁きがはじまるのだ。
 扉が開いた。ふっと息を吐き、重たい足を引きずるように中に入った。とたんに、大勢の視線が自分に集中するのがわかった。
 木柵の仕切りの向こうの傍聴席は満員だった。ゆっくりと歩を進める優一郎の一挙一動に、好奇の目が集まっているのを意識し、すぐそこにある被告人席までがずいぶんと長く感じられた。
 被告人席のすぐ後ろに鶴見京介弁護士が座っていた。そこで、優一郎は手錠と腰縄を外された。
 優一郎は軽く会釈をし、静かに腰を下ろした。そして、優一郎は傍聴席に目をやった。