小説に興味を持ってから人生が楽しくなった

読書が苦手だった私が、五十歳を過ぎてから、急に読書が好きになった。そのおかげで人生が豊かになった気がする。これからもっと読書が好きになれるように、人生が楽しく豊かになるように

小説に出てくる名言集 (森沢明夫 ヒカルの卵)

 自己啓発の本でなくても、小説のなかには、作者からのメッセージがたくさん込められています。そこから学べること、気付かされることで人生が豊かになるはずです。

ヒカルの卵 森沢明夫
 もしかすると、人間という生き物の脳は、ただ少し顔を上向けるだけで「落ち込まないような仕組み」になっているのてはないか、大人になってから、そんな風に思うようになった。

「これはよ、俺の死んだ父ちゃんに、よく言われたことなんだけどもな、転がした卵とおんなじで、自分のやったことは、いつかくるりと回って自分に返ってくるんだって。それが自然の摂理。だから人に優しくすれば、いつか誰かに優しくされるし、暴力を振るえば、いつか痛い目に合うんだぁ」
 そこまで言うとムーさんは、あぐらをかいたまま、直子に尻餅をつかせたチンピラ顔の男を見上げた。

「でも、リスクは、絶対あるよ」
「分かってる」
「じゃあ、どうして」
「死んだ父ちゃんがな、よく言ってたんだ」
「……」
「財産を失うのは小さな痛手だけども、勇気を失うのは人生を失うのと同じだってよ」

「人間の心ってな、絶対に傷つかねんだってさ」
「え?」
「自分では傷ついたと思っても、それはただ磨かれてるだけなんだって」
「何、それ……」
「さっき、直ちゃん、人生いろいろって言ったけどもよ、そのいろいろってのは全部ヤスリなんだ。ヤスリってよ、ザラザラしてっから、心がこすられれば痛てえべ? でもよ、それをぐっと我慢して、痛みを乗り越えれば、ヤスリで磨かれた心は、前よりピッカピカになって、珠みてえに光り輝くんだって」

「まだ起きてもいねえ未来のことを不安がって、せっかくのいまを暗い気分で過ごしてもしようがねっぺ?」
「……」
「過去のことだっておんなじだよ。過ぎたことを思い煩って、いまを不幸せに過ごしても、損なだけだべ?」
 二郎は黙って、わたしを見下ろしていた。身体は大きいけれど、まだまだ可愛い子供だ。
「いいかい、二郎。人間ってのはね、過去も未來も生きらんねえの。生きられんのは、一瞬のいまだけ。だから、いまこの瞬間を感謝の気持ちで生きて、それを、ひたすらずっと続けていくだけ。だって、それが幸せな人生を送るってことなんだから」

「努力をした結果、それが実る人と実らない人がいるんではなくて、実るまで努力を続けた人と、実る前に努力を止めた人がいるだけなんだって。そう思ったの」

「裕福と幸福ってのは、別ものだべ」

 さすが能天気なムーさんだ。自分が相手を疑わなければ、自分の敵は生まれないのだ。